豊かな日本の四季に育まれたお米を中心とした日本の食文化をご紹介します
【清明(せいめい)】
5日頃。関東以西では桜が見頃となり、桜前線も徐々に北上していきます。万物が清々しく明るく美しい頃で、花々が咲き乱れ、お花見には絶好のシーズンを迎えます。
季節に初めて目にするものは気持ちをうきうきさせてくれます。「初桜」は春になって初めて咲いた桜のこと。目にもあざやかな黄色が一面に広がる「菜の花畑」は壮観で、代表的な春の風物詩です。ツツジに似た花を咲かせる「石楠花(しゃくなげ)」は初夏の花。
お花見の由来
古代、桜は花が咲く時期で稲の種をまく時期を知るなど、暦代わりに使われていました。また、満開の桜に豊作を祈り、その散り具合で米の出来具合を占うなど、神の宿る木と信じられてもいました。
万葉の頃、花といえば中国から伝わった梅をさしていましたが、遣唐使の廃止以降は日本固有の桜をさすようになりました。平安時代には人々が桜の咲き具合に気をもむさまが歌われています。公家や武士など上流階級だけの楽しみだったお花見が庶民にまで広まったのは江戸時代になってから。以来、お花見は春の風物詩として欠かせないものになりました。
お花見の必需品“弁当箱”の歴史
お花見に欠かせないものといえばお弁当ですが、弁当箱にも長い歴史があります。室町時代、中国から竹製の食籠(じきろう)という弁当箱が伝わりました。安土桃山時代には、重箱が広く使われ、江戸時代には2食セットの振り分け弁当が登場します。大正時代になると、通勤や通学にお弁当を持つ習慣ができ、アルミ製の弁当箱が登場しました。
エコロジーや健康志向の高まりから“弁当ブーム”といわれる昨今、多様な弁当箱が見られるようになりました。
竹の茎を若いうちに採って食用とするのが竹の子です。モウソウチクが大部分で、ほかにハチクやネマガリタケなども食します。掘りたてほど美味しく、時間が経つと苦味やえぐ味が出ます。竹の子を漢字で「筍」と書くのは、成長が早く、一旬(十日)で竹になるからだそうです。
民話とお米
私たち日本人の主食であるお米を作る稲作は、自然とともに生きる文化や伝統を育んできました。それは、田んぼを中心とした里山の鳥や動物、草花とともに生きることを意味していました。
日本各地に残る昔話は、そんな日本人の自然に対する生き方、考え方を今に伝えています。お米や稲作にちなんだ昔話も多く、「おむすびころりん」「さるかに合戦」などでも、「おむすび=お米」が重要な役割を果たしています。そこには、「お米は大切だ」というメッセージが込められています。皆さんのまわりにはどんな昔話があるでしょうか。
糠は玄米を精白する際に出る、種子や胚芽が砕けて粉になったもの。糠の「康」は穀物の実が抜けた殻の意味で、米ぬかから「糠」の字ができました。ちなみに、小麦の糠は「ふすま」といいます。 |
【春分(しゅんぶん)】
21日頃。昼夜の長さがほぼ同じとなる日で、この日から夏至までの間、昼が長くなり、本格的な春が始まります。春分をはさむ前後それぞれ3日、計7日間が「春の彼岸」です。
冬型の気圧配置が崩れ、東から西へ春風が吹きますが、吹きはじめの頃の風が「東風(こち)」。「春雷(しゅんらい)」は立春を過ぎてから発生する雷で、春の到来を伝えます。「彼岸桜(ひがんざくら)」は桜の中で開花が最も早く、彼岸の頃、一重(ひとえ)で淡紅色(たんこうしょく)の小さな花をつけます。
雛まつりの由来
病気や災いなどから身を守るために人形(ひとがた)を作り、それを身代わりにする古代からの風習と、平安時代に宮中や貴族の間で3月3日に行われていた「雛(ひいな)遊び」が結びついて始まったとされています。
「桃の節句」は、江戸幕府が制定した式日のひとつで、女の子のすこやかな成長を祈って祝い、雛人形を飾るようになりました。現在の段飾りは江戸中期以降の流行の名残といわれていますが、古代の風習を残す「流し雛」や伊豆地方の「つるし雛」など、日本各地に様々なお雛さまが伝わっています。
東と西で作り方が違う、ちらし寿司
海の幸、山の幸がたくさん盛り込まれて見た目にも華やかなちらし寿司は、地域によって様々な作り方があります。主に東日本では、握り寿司のネタを酢飯の上に彩りよくのせて食べる「江戸前のちらし寿司」が一般的であるのに対して、西日本では岡山県の「ばら寿司」を代表するように、魚介類や野菜などの具材を細かく切り、酢飯に混ぜ込んで食べる地域が多いようです。
さて、みなさんのご家庭では、どのような作り方をしていますか?
古くから野菜として、また油を採るために栽培されてきた作物で、アブラナ科のアブラナの花をいいます。葉も茎もおいしく食べることができ、ゆでておひたしやあえ物、炒め物、汁物、揚げ物など様々に使うことができます。ビタミンCやミネラルが豊富な緑黄色野菜で、一面に広がる黄色い菜の花畑は春の風物詩です。
お米と祭事の関係
干ばつや冷害、秋の台風、病害虫の発生といった自然の驚異を和らげ、豊作を祈願するために、古くから稲作にかかわる様々な儀式や祭りが行われてきました。日本各地で行われる夏祭りや秋祭りの多くは、田の神に豊作を祈り、感謝したことに由来するといわれています。
また、相撲の土俵入りで行う「四股(しこ)」には、大地を力強く踏みしめて災いを追い払い、豊作を祈願するという意味合いがあります。
庄は「飾る」という意味で、白粉(おしろい)をつける女性の様子から生まれた漢字です。お米の粉を白粉として使ったことから、「米へん」になったのだろうとされています。 |
【立春(りっしゅん)】
4日頃。節分の翌日にあたり、寒さは厳しいものの暦の上ではこの日から春。二十四節気の最初の節で、「八十八夜」、「二百十日」などすべて立春の日から数えられています。
「初春」を「はつはる」と読めば正月の季語、「しょしゅん」と読めば早春を指します。「春時雨(はるしぐれ)」には冬の季語である時雨とは異なり、春の明るさや華やぎがあります。「梅」は春の花に先がけて咲き、春を告げる花。いずれも春の訪れを予感させる季語です。
節分になぜ豆をまく
節分の豆まきは、古く中国に由来する「追儺(ついな)」と呼ばれる朝廷の年中行事だといわれています。悪鬼を追い払い疫病(えきびょう)を除くため、大晦日の夜、鬼に扮装(ふんそう)した人物を天皇や皇族が葦(あし)の矢を桃の弓で射かけ、追ったのが始まりだといわれています。
それがやがて形を変えて寺社や庶民の間で行われるようになり、現代のように大豆をまいて鬼を追い払うようになりました。豆は「魔目(まめ)」に通じ、また霊力があるとされたためで、これは室町時代に明の国から伝わったとされています。
幸せを願って食す恵方巻き
節分の夜に、その年の恵方(陰陽道(おんみょうどう)で干支に基づいてめでたいと定められた方角)に向かって、願い事を思いながら無言で太巻きをまるかじりする「恵方巻き」。商売繁盛や健康などの幸福を願う、関西地方に伝わる習慣です。七福神にちなんで、カンピョウやキュウリ、だし巻など七種類の具を入れ、福を食べるという意味合いも。最近では全国に広まり、家族そろって太巻きにかじりつく姿もめずらしくなくなりました。
加熱するとほくほくしてほろ苦い風味のある百合根。独特の香りと味覚が楽しめ、茶わん蒸しのほか、きんとんなどの和風料理に用いられます。食物繊維が豊富で、コレステロール値の上昇を抑える働きもあるそうです。焼きミョウバンを加えて煮ると煮崩れしません。
お米が日本の主食になったわけ
お米は、日本をはじめ世界の多くの人々の主食となっています。3,000年ほど前に始まった日本の米づくりは、九州地方から東へ広がり、2,200年ほど前には現在の青森県まで伝わっています。温暖でよく雨が降る日本の気候が稲の栽培に適していたため、日本中に稲作が定着したのです。
お米は毎年安定した収穫が得られ、長い間保存ができるので、収穫が少ないときも保存したものを食べることができます。また、その味が日本人の好みによく合ったこともあって、私たちの祖先は、お米を主食に選んだのでしょう。
粒の「立」は離ればなれの意で、一粒一粒になった米粒を表します。さらにその米を細かに「分け」砕いたものが米粉で、物を細かに砕いたものを総じて「粉」と呼ぶようになりました。 |
【小寒(しょうかん)】
5日頃。この日を「寒の入り」といい、大寒(20日頃)を経て節分までのおよそ30日間を「寒の内」といいます。1年で最も寒い時期に当たり、期間中に寒中見舞いを出します。
「氷柱(つらら)」は水滴が凍って長く垂れ下がったもので、垂氷とも書きます。「雪見」は降った雪を眺めて愛でること。「水仙」は冬枯れに気品ある花を咲かせる冬の花。いずれも晩冬の季語です。「寒椿」は特定の種類の椿ではなく、冬に早咲きをする椿のこと。
七草粥の由来
「セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ」、春の七草は、まるで短歌を詠んでいるような楽しげな音感を持った名がならんでいます。ゴギョウ(御形)はハハコグサ(母子草)、ハコベラはハコベのこと。この七草をお粥にして1月7日に食べる七草粥は古くは平安時代に慣例となり江戸時代に広まったといわれています。
七草は、早春にいち早く芽吹くことから邪気をはらうといわれました。そこで、無病息災(むびょうそくさい)を祈って七草粥を食べるようになりました。実際に春の七草には、様々な効能があることが知られています。
七草の効能
- セリ 消化を助け、便秘、冷え性、風邪の予防。
- ナズナ(ペンペングサ) 貧血、視力に良く、高血圧、風邪の予防。
- ゴギョウ(ハハコグサ) 吐き気を止める。胃炎をしずめ、せき、たん、熱をとる。
- ハコベラ(ハコベ・ニワトリグサ) 整腸効果・利尿作用がある。
- ホトケノザ(コオニタビラコ) 筋肉痛、高血圧の予防。
- スズナ(カブ) 整腸・解熱効果。便秘、貧血、骨粗しょう症の予防。
- スズシロ(ダイコン) 整腸・解熱効果、便秘、たんを止める。
鍋料理や漬物などに欠かせない、冬の野菜を代表する白菜。意外にも日本に普及した歴史は浅く、日清・日露戦争の際に兵士たちが現地から持ち帰ったことがきっかけといわれています。ビタミンCやカリウムが多く、なにより食物繊維が豊富でやわらかく、胃腸にやさしいのが特徴です。
3,000年ぐらい前(縄文時代)の日本に渡来
お米作りは、モミガラなどの痕跡(こんせき)から、今から1万年ぐらい前、インドや中国の一部で稲の栽培が行われていたと考えられています。やがて、東南アジアや中国各地にも広まり、今から3,000年ぐらい前の縄文時代に日本に伝えられました。お米が伝えられた経路については、複数あったとされています。
また、お米を日本に伝えたのは、農具の共通性などにより、当時の朝鮮半島に住んでいた人ともいわれています。ただし、最近の説では、中国南部に住む人たちによって直接伝えられたとも考えられています。
釜でよく煮て湯気が上がる意味の「弜」という旧字と、「米」から成る漢字です。粥は「しゅく」と音読みしますが、同じようによく煮る意味をもつ「熟(じゅく)」と関係があります。 |
【冬至(とうじ)】
22日頃。1年で最も昼が短く、この日を境に日が長くなっていきます。柚子湯に入り、小豆粥(がゆ)やかぼちゃを食べ、無病息災(むびょうそくさい)を祈る習慣があります。寒さの本番はこれからです。
「初雪」はその冬初めて降る雪のことで、本格的な冬の先触れともいえます。また、冬の美を代表する雪を愛でる心も含まれています。野が枯れ、荒涼として生気を感じさせない景色が「冬枯(ふゆがれ)」。葉を落とした裸木や、寒さに耐える常緑樹の木立(こだち)が「冬木立」です。
冬至のかぼちゃ、柚子湯のわけ
冬至は1年で最も日が短く、夜が最も長い日です。かつては太陽の恵みは命の源と考えられていました。そのため冬至は「1年で生命力が最も弱まる日」と捉えられ、その厄(やく)をはらい生命の復活を願って様々な祭事が行われました。
冬至に食べると風邪をひかないといわれる「冬至かぼちゃ」は、江戸時代が始まり。野菜が不足しがちな冬場の栄養補給源として重宝(ちょうほう)されました。柚子を浮かべる「柚子湯(冬至風呂)」は、その香りで邪気をはらい無病息災を祈る風習で、江戸時代の銭湯で始まりました。柚子と融通(ゆうずう)、冬至と湯治をかけて縁起をかついだともいわれています。
1年を締めくくる除夜の鐘
除夜の鐘はなぜ108回? |
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その年におかした罪を反省し新年を迎えるために人の煩悩(ぼんのう)の数である108回鐘をついて身を清める。 |
月の数「12」と二十四節気の「24」そして七十二候(しちじゅうにこう)の「72」を足した数で、1年をあらわす。 |
人が生きることで経験する「四苦八苦(4×9+8×9)」を取り払うため。 |
晦日(みそか)の「みそ」は「三十」のことで、晦日は月の最終日をさします。12月31日は1年の晦日であるため、大の字を添えて大晦日といい、元日を翌日にひかえた1年最後の日として様々な習わしがあります。
日本各地で荘厳(そうごん)な音を響かせる除夜(じょや)の鐘もそのひとつ。一般には大晦日に107回、年が明けて1回の計108回。この鐘をつく回数の由来にはいくつかの説があります。
西アジア原産で、東洋種と西洋種に大別されます。現在は両者の交配種が主流ですが、冬のほうれん草のビタミンC含有量は、夏の3倍。また、霜にあたると繊維も柔らかくなり、甘味も増して一段と味も良くなります。ビタミンやミネラル類が豊富で、特に鉄分を多く含み、貧血予防に効果があります。
八十八は自然の恵み
米という漢字を分解すると「八」「十」「八」に分けることができ、昔から「八十八」は「米」を意味する言葉としても使われてきました。八十八歳の誕生日を「米寿」というのも、このことからきています。ほかに、「立春から数えて八十八夜が農家ではもみまき(米の種まき)の目安」とか、「お米が実るまでには八十八回も手をかけるから」という説もあります。
もともと米という漢字は、稲穂に米が実った様子からできた象形文字といわれています。お米は古代から私たちの命を支えてきた自然の恵みの代表。一粒でも無駄にせず、感謝の気持ちを抱きながらいただきたいものです。
糧(かて)の「量」は道を表し、道中で食べる米という意味。兵糧(ひょうろう)と書くと兵士が行軍する際に携行する食料のこと。また、穀類や納める年貢も糧といいます。 |
【小雪(しょうせつ)】
22日頃。小雪とは、冬とはいえまだ雪はさほど多くないというほどの意味。立冬の15日後にあたり、雪国からはそろそろ初雪の知らせが届き、落葉の季節を迎えます。
その冬になって初めて降りる霜を「初霜」といい、冬の初めに降る通り雨が「時雨(しぐれ)」。「小春」は初冬の、春のように暖かで穏やかな日和(ひより)を指し、小春日和ともいいます。「山茶花(さざんか)」はツバキ科の一種で、晩秋から初冬にかけて紅や白の五弁の花をつけます。
七五三の由来
現代ほど医療が発達していなかった昔、病気や事故、貧困などが原因で乳幼児が成人するまでの生存率が低かったため、その健康を祝い、行く末の無事を祈ったのが「七五三」の始まりです。
11月15日は鬼が出歩かない鬼宿日(きしゅくにち)という日にあたり、何事をするにも吉であるとされたため、この日が選ばれたという説や、旧暦では11月が収穫を祝う秋祭りの月のため、その満月の日にあたる15日になったという説など様々です。
お祝いの席の代表魚といえば
七福神の一人・恵比須様が釣竿で鯛を釣り上げた姿をしているように、冠婚葬祭などの祭礼や祝いの席に欠かせない魚の代表格といえば「鯛」。
江戸時代には将軍家でも喜んで食されたため、「大位」とあて字をされるほどもてはやされたようです。
その「鯛」を県魚とする愛媛県の有名な郷土料理に「鯛めし」があります。地域によって調理法が大きく2種類に分けられますが、ふっくら熱々のご飯と鯛の取り合わせは、子どもの健やかな成長を願う七五三にふさわしいお祝い料理といえるでしょう。
アフガニスタン周辺が原産地。17世紀に赤くて長い東洋種が、18世紀末に橙(だいだい)色で甘味の強い西洋種が渡来し、第2次大戦後に西洋種が主流になりました。免疫力をアップするカロテンが豊富に含まれ、ビタミンAの含有量は野菜屈指。ビタミンB群も豊富で栄養価の高い優秀野菜です。
ご飯は食事のまとめ役
日本には様々な文化があります。なかでも「食」の文化は、長い年月を経て培われてきました。私たちがふだん食べているご飯はお米を炊いた食べ物ですが、国によっては、炒める、煮るなど、味付けしたお米料理を食べるところも有ります。
日本のご飯は“味がない味”を特徴としているので、野菜や魚の味の違いを季節ごとに楽しむほどの繊細な食文化を育みました。そのうえ、和風、洋風、中華風などのおかずにもよく合うため献立のバランスをとりやすく、食事のまとめ役として最適な食べ物といえます。
もとは麦芽から作った液体状の糖蜜をさし、甘味料として利用されていました。この液体を煮詰めたものが水飴。その水飴に、煎(い)った米の粉を加えて作った干し飴を指すこともあります。 |
【霜降(そうこう)】
23日頃。初霜の降りる季節で、日中は寒さを感じなくても夜は冷え、秋も深まった感じがします。秋の草花が咲き誇り、野山を赤や黄色で彩る紅葉も見頃を迎えます。
「秋高し」とは大気が澄み、晴れ渡った空が高く感じられること。ワラや竹などで人の形を作り、田畑に立て、農作物を鳥獣の害から守る人形が「案山子(かかし)」。今年新しく収穫したお米が「新米」で、9月中頃から出荷が始まり、炊きたては香りも高く格別です。
十五夜と十三夜
暦にも使われていたように、日本には古くから月をみる習慣がありました。秋は春・夏に比べ湿度が低いため空気が澄み、冬ほど寒くないのでお月見をするのに最適の季節。
一般的にお月見といえば、9月(旧暦8月)の満月・十五夜(じゅうごや)ですが、10月(旧暦9月)の満月・十三夜(じゅうさんや)にも、お月見をする風習があります。昔は片方しかお月見をしないのは、「片見月(かたみつき)」といって縁起が悪いとされていました。
芋名月と栗名月
十五夜を鑑賞する習慣は中国から伝わりました。旧暦8月15日を中秋(ちゅうしゅう)と呼ぶため、「中秋(仲秋)の名月」といいます。その1ヶ月後の十三夜は「後(のち)の月」といわれますが、こちらは日本特有のもの。
ちなみに、十五夜は里芋を供えることから「芋名月」とも呼ばれますが、十三夜には食べ頃の栗や豆が供えられることから「栗名月・豆名月」と呼ぶようになりました。
栗は秋の味覚を代表する木の実。皮のままゆでたり、焼いたりして食べるのも美味しいけれど、お米とともに炊き込む「栗ご飯」や「栗おこわ」は、秋の“旬の味”の代表です。主成分は炭水化物ですが、ビタミンB1やCも少なくなく、またカリウムが豊富に含まれていて風邪予防や疲労回復などに効果があります。
お茶わん1杯分の栄養は?
ご飯には、脳を働かせるエネルギーのもととなる炭水化物をはじめ、からだの基礎をつくるたんぱく質や鉄分、食物繊維、ビタミンなど、様々な栄養素が含まれています。ご飯を主食として、栄養のバランスのとれた食事を規則正しくとることが大事です。
<お茶わん1杯分(約150g)に含まれる主な栄養分>
- 炭水化物:
- 55.6g(脳やからだを動かすエネルギー源)
- 鉄分:
- 0.1mg(からだの細胞に必要な酸素の運び役)
- ビタミンB1:
- 0.03mg(からだの機能を正常に保ち、糖をエネルギーに変えます)
- たんぱく質:
- 3.8g(からだを構成する筋肉や皮膚、血液などの主成分)
糊の「胡」には固める意味があり、のりづけすることを意味します。また、濃い粥(かゆ)を作ることや粥をすすることを指し、転じて「暮らす」意味にも用いられます。 |
【秋分(しゅうぶん)】
23日頃。「春分」と同様、昼と夜の長さが同じ日。この日を境に夜が昼より長くなり、夜長の季節が到来します。秋の彼岸の中日で、前後3日間、計7日が「秋の彼岸」です。
「仲秋(ちゅうしゅう)」とは秋を初、仲、晩の3つに分けたうちの真ん中の月のことで、秋の半ばを指します。残暑もなくなり、涼しい夜が長く感じられる頃が「夜長」。「金木犀(きんもくせい)」は秋に小さな花をつける木で、漂う芳香は秋の深まりを感じさせます。花色の違う銀木犀、薄黄木犀もあります。
秋の彼岸とは
23日頃の秋分の日を中日(ちゅうにち)として、その前後3日間ずつを加えた1週間が「秋の彼岸」です。初日を「彼岸の入り」、最終日を「彼岸の明け」といい、期間中には家族でお寺やお墓参りをして先祖の霊を供養します。「彼岸」とは仏教の考えで、現世のこちら側に対して、解脱(げだつ)した悟りのあちら側の世界を指します。
秋の彼岸に対して、3月21日頃の春分の日の前後3日間ずつ、7日間を春の彼岸といいます。暑さ寒さも彼岸までといわれるのは、秋の彼岸から夏の暑さも一段落し、春の彼岸から本格的に春を迎えるという意味です。
おはぎと「ぼたもち」の違いは
彼岸には、おはぎを供える習慣があります。おはぎのあんに使われる小豆の赤い色には、災難から身を守る効果があると信じられていて、それが先祖の供養と結びついたといわれています。ところで、「おはぎ」と「ぼたもち」の違いをご存じですか?
呼び名は違いますが、実は同じ食べ物。それぞれ「お萩」「牡丹餅」と書かれるように、萩は秋、牡丹は春の呼び名で、それぞれの季節に咲く花に例えられています。
インド原産のナス科の植物で、日本には奈良時代に伝わりました。当初は「なすび」と呼ばれましたが、宮中の上品な言葉遣いから「なす」に。栄養価は低いのですが、食物繊維が多いこと、皮の紫色の成分であるナスニンは動脈硬化や老化防止に、また、疲れ目やドライアイの予防にもよいと注目を集めています。
お茶わん1杯のご飯について
お茶わん1杯のご飯の量はおよそ150g。これを炊く前のお米(精米)に 置き換えると約65g、米粒だと3,250粒くらいです。お米は炊くと重さが2.3倍ぐらいになるのです。
ところで、その65gのお米の値段は約24円。食パン1食分(6枚切りを2枚分)は約60円ですから、お米がいかに安いかがわかります。また、お米を炊く時に加えられるものは基本的に水だけです。ところがパンに含まれるものは小麦以外にも塩、油、砂糖など以外にたくさんあり、その分カロリーも多くなりがち。お米はダイエット食ともいえるのです。
「粟」はイネ科の雑穀ですが、古代では籾殻(もみがら)つきの実や五穀の総称を意味しました。現在はその栄養価の高さから、五穀米などにして食べる方法が見直されています。 |
【立秋(りっしゅう)】
7日頃。暦の上ではこの日から秋。猛暑の中で迎える立秋には、まだ秋の実感はないものの、立秋を過ぎてからは朝な夕なに秋の気配を感じ始めます。
「初凉(はつすず)し」とは木陰や風、風鈴の音など、ほんの少しの涼味や涼感の心地よさをあらわす季語。「走馬灯(そうまとう)」は影絵が回転しながら映るように細工された灯籠(とうろう)の一種です。その鳴き声から、機織(はたおり)の別名がある「きりぎりす」は初秋の季語。
お盆にまつわる話
先祖を迎えるお祭り、お盆の正しい名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」。1年に一度、先祖の霊が帰ってくる期間とされています。
初日の夕方には、帰ってくる先祖の霊が家を見つけやすいように盆提灯(ちょうちん)を灯したり、迎え火を焚(た)き、最終日には霊の帰り道を照らすため送り火を焚きます。お盆の期間中、家族や縁者が精霊棚(しょうりょうだな)に精進料理や初物の野菜、果物、菓子などを供えて供養します。また、先祖の霊の乗り物として、きゅうりやなすを使った精霊馬(しょうりょううま)が飾られるなど、地域によって様々な習慣があります。
精進料理は菜食料理
精進料理とは、動物性の食事を禁じた仏教思想の戒律(かいりつ)の中から生まれた菜食料理です。もとは僧侶(そうりょ)の修行のひとつでしたが、冠婚葬祭やお盆などに一般家庭や料理店でも作られるようになりました。また、菜食では不足しがちなたんぱく質を得る手段として、大豆が多く取り入れられてきました。煮豆など、豆の形を残したメニューのほか、豆腐や納豆、油揚げなど、バリエーションも豊富です。今では、精進料理を食べさせてくれるお寺もありますので、襟を正して体験してみてはいかがでしょうか。
中南米原産のイネ科の植物。コロンブスのアメリカ大陸発見以来、世界に伝わり、稲、小麦と並ぶ世界三大穀物のひとつに数えられています。デンプンが主成分で、胚芽には脂質、ビタミンB群やEを多く含みます。収穫後の味や栄養価の変化が早いので、早く調理して、冷蔵保存するとよいでしょう。
日本で一番お米を作っている都道府県は?
稲は熱帯生まれの植物ですが、日本各地の気候や風土に合わせて品種改良が重ねられ、今では毎年300種以上ものお米が作られています。
お米の収穫量の多い都道府県は、1位北海道、2位新潟県、3位秋田県。新潟は古くから米どころとして知られ、「魚沼産のコシヒカリ」などは最高級のお米として有名です。また北海道は気温の低さから、以前はお米づくりには適さないといわれていましたが、品種改良によって寒さに強い品種が開発され、平成20年にはついに国内トップの米どころになりました。
「精」という漢字は米をついて糠(ぬか)を取り除き、精米した米の意味。そこから精米できるだけの技術や知識をもつという意味に転じ、「~に精通する」など「詳しい」という意味でも使われます。 |
【小暑(しょうしょ)】
7日頃。梅雨明けも近く、気温も日増しに上昇し、夏らしくなってきます。小暑から立秋までの期間を暑中と呼び、この時期に「暑中見舞い」を出します。
霊山に対する信仰として山に入るのを禁じ、夏の一定期間だけ禁を解いたのが「山開き」。現代ではスポーツ登山が中心となり、その年初めての登山を許すこと。「夕立」は夏の盛り、発達した積乱雲が降らせる雨。「空蝉(うつせみ)」とは蝉のぬけ殻です。
土用の丑の日になぜ鰻
写真提供:鰻割烹「伊豆栄」
「土用」とは、中国古代の五行(ごぎょう)思想に基づくもので、四季の終わりの18日間をさします。特に夏の土用(7月20日~8月6日頃)の頃は、暑さが厳しく夏バテしやすいため、栄養のあるものを食べる習慣ができたようです。土用に鰻を食べる由来には諸説ありますが、江戸時代に「本日土用丑の日」と平賀源内(ひらがげんない)が鰻屋の店先に書かせたことに始まるという説が最もよく知られています。
ちなみに鰻を食べる習慣が一般的になったのは幕末の頃ですが、実際、鰻の栄養価は高く、夏バテ予防の強い味方です。
万葉集にも歌われた“鰻の栄養”
夏バテを防ぐために鰻を食べる歴史は古く、なんと万葉集にも歌われているほどです。高たんぱく質で消化もよく、体の抵抗力を高めるビタミンAを多く含むほか、疲労回復やエネルギー源の代謝を助けるビタミンB群、細胞の老化を防ぐビタミンE群、そしてカリウム、鉄などがバランスよく含まれています。また、皮には良質なコラーゲンが豊富なので、美肌効果もバッチリです!
中近東から地中海沿岸にかけた地域が原産のキク科の植物。レタスは品種改良され、多種多様な種類がありますが、葉が巻いている玉レタスより、サニーレタスやサラダ菜の方がカロテンやビタミン類、ミネラルなど体に必要な栄養素がまんべんなく含まれています。見た目も爽やかな夏のサラダの主役です。
コシヒカリから生まれた子供たち
コシヒカリは昭和31年のデビュー以来、すでに50年以上が経ちました。現在、47都道府県のうち、北海道、青森県、沖縄県を除く全国で生産されています。また、昭和60年頃から、その土地に適したコシヒカリを作ろうと、第1世代を親に持つ第2世代、さらに第3世代が登場し、今では15種類以上とも。
代表的なものに秋田県を中心にした「あきたこまち」、九州や西日本で作られている「ヒノヒカリ」、宮城県を中心に生産されている「ひとめぼれ」などがあります。コシヒカリの美味しさを受け継ぎ、より病気に強く、より早く収穫できるようにと日々研究がされています。
料の「斗(と)」は酒を酌(く)む柄杓(ひしゃく)の形からできた漢字で、日本では枡(ます)の意味になりました。枡は米を量(はか)る際にも用いられたことから、量るという意味で使われます。 |
【夏至(げし)】
21日頃。太陽の位置が最も高く、1年で一番昼間が長く夜の短い日。暦の上では夏の真ん中ですが、実際には梅雨でうっとうしい時期。
稲の苗を水田に植えることを「田植え」といい、苗取りや田植えをする女性を早乙女(さおとめ)と呼びました。「五月雨(さみだれ)」は梅雨に降り続く雨のこと。「紫陽花(あじさい)」は梅雨入りの頃から咲き始め、梅雨明けとともに花期を終えます。
梅雨(つゆ)にまつわる話
梅雨は、ちょうど梅の実が熟する頃の雨という意味に由来しています。また、湿度の高いこの時期は黴(かび)が発生しやすいことから「黴雨(ばいう)」が転じて「梅雨」になったともいわれています。
冷蔵庫などなかった昔、人々は食べ物の痛みを防ぐために様々な工夫を凝らしました。たとえばご飯に梅干しを入れたり、酢飯にして保存性を高めたり、おにぎりを包んだ竹の皮にも抗菌効果があることが知られています。また梅干しの酸味は胃腸の働きを活発にし、食欲回復に効果があり、その成分であるクエン酸は疲労回復に役立ちます。
究極の保存食・梅干
熟した梅の果実を塩漬けにしたあと、天日に干したものが「梅干」で、千年以上前から日本人に親しまれてきた伝統的な保存食です。 保存状態がよければ賞味期限がないともいわれているように、奈良県の旧家に天正4年(1576)に作られたものが今でも良好な状態で保存されていて、それが現存する最古の梅干といわれています。
ところで、古い梅干には、表面に白い塩状の粉がついていることがありますが、カビではなくクエン酸やナトリウムの結晶です。
病気になったエジプト王が、モロヘイヤのスープで治ったという伝説から「王様の野菜」の別名があります。カロテンの含有量は野菜の中でもトップクラス。また、ビタミン類やミネラルも豊富で、栄養価はまさに野菜の王様。さっぱりした味で、刻むとネバネバが出てきます。茹でてアク抜きをしてから食しましょう。
コシヒカリの誕生と名前の由来
コシヒカリの原形は昭和19年に新潟県農業試験場で誕生し、福井県農業試験場で育てられました。当時はお米の増産が求められていたため、味はよくても稲が倒れやすく、病気に弱いという欠点があるこのお米は、どこの県でも見向きもされませんでした。しかし、ごはんの味に注目した新潟県は、新品種として改良を加え「日本一おいしい」といわれるコシヒカリを誕生させたのです。
ちなみに、コシヒカリは「越光」と書きます。越とは新潟県など、かつての「越国(こしのくに)」のことで、「越の国に光り輝く米」との願いが込められています。
米の字に、手にくっつく意味を持つ「占」の字から成り、ねばり気のある穀物を表します。転じて根気が強い、よく頑張るという意味にも使われるようになりました。 |
【立夏(りっか)】
5日頃。立夏とは夏が始まる日で、暦の上ではこの日から立秋までが夏。ゴールデンウィークの最後の頃で、山や野は新緑と色とりどりの花で飾られる美しい季節です。
「初夏」は新緑の頃から梅雨入り前までの季節。一年で最も安定した気候で、清々しくさわやかな季節。「菖蒲(しょうぶ)」は邪気(じゃき)を払う植物のひとつで、端午の節句には菖蒲湯に入ります。また、その年の最初に摘みとられたお茶が新茶で、香り高いのが特徴です。
端午の節句の由来
「端午の節句」は5月5日にあたり、邪気を払う菖蒲を軒につるし、菖蒲湯に入ることで無病息災(むびょうそくさい)を願ったことから、「菖蒲の節句」ともいわれます。旧暦では現在の5月下旬から6月半ばにあたり、体調を崩しやすい季節の変わり目になります。
薬効もあり、強い香りで病気や災いを遠ざけようとした風習から、菖蒲がつきものとなったのが始まりのようです。
やがて、菖蒲を「尚武(しょうぶ)」という言葉にかけて、武家社会を中心に男の子のお祭りとして祝うようになり、江戸時代に五節句のひとつと定められ、昭和23年(1948)からは「こどもの日」として祝日に指定されました。
粽(ちまき)の由来
昔、中国で不遇の死を遂げた武人の命日(5月5日)に、楝樹(れんじゅ)の葉で米を包み五色の糸で縛って川へ流し、霊を祀(まつ)ったことが始まりといわれています。日本ではその風習を取り入れ、端午の節句にちまきを供えるようになりました。また、日持ちがして、手軽にできることから、携帯食糧としても用いられ、千巻・茅巻(ちまき)と称して食すようになりました。なお、粽と同じく、端午の節句に欠かせないお供え物に「柏餅」があります。一般的に関東では柏餅、関西では粽を食べる傾向にあるようで、江戸時代の終わり頃に定着したとされています。
えんどう豆のうち、未熟の実をさやごと食べるものがさやえんどう。えんどう豆の栽培の歴史は石器時代にまでさかのぼり、古代エジプトのツタンカーメン王の副葬品の中からも発見されています。日本では奈良時代に野良豆の名前で記録がありますが、さやごと食べるようになったのは江戸時代からだそうです。
日本のお米の品種
日本ではたくさんの品種のお米が作られています。その地域の気候や風土に合わせて常に品種改良が行われ、今では毎年300種以上ものお米が栽培されています。品種改良は味を良くすることはもちろんですが、寒さや病気に強いものや収穫量の多いお米を作る目的もあるのです。
ちなみに、日本で最も多く作られているお米の品種は「コシヒカリ」で、二番目は「ヒノヒカリ」、三番目は「ひとめぼれ」と 続きます。「コシヒカリ」は昭和54年以降、30年連続で1位を独走中です。皆さんの家庭では、どんなお米を食べていますか。
「卆(そつ)」は「卒」の俗字で、旧字では「粹」。「卒」の持つ、「つく」という意味から、よくついて不純物を取り除いた米を表します。そこから「混じり気がない」という意味になりました。 |